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オランダ研修紀行文

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こんにちは、2018年3月オランダ研修の派遣メンバーの髙橋(法学部 講師)です。この度本学HPにて、「英語科目」と「異文化理解と国際交流」の担当教員という視点から振り返りながら、オランダ研修の紀行文(というにはいささか拙いですが…)を掲載させていただく事になりました。学際的な部分は大きく排除し、気楽に読んで頂けるような内容となっています。ご笑覧いただければ幸いです。なお、現地講義・農家視察の内容については別の記事が本学HPに掲載されているのでそちらをご覧くださいね。
(リンク先:https://www.miyasankei-u.ac.jp/2018-04-04/9261/

 

1. 2つの「距離」の話
宮崎から関西国際空港への前泊込みの国内移動を経て、関西国際空港から約12時間のフライトでオランダ・スキポール空港に到着しました。約12時間というフライト時間がすでに日本とオランダの地理的な「距離」の膨大さを物語ってはいますが、スキポール空港で次のようなユニークなオブジェを発見。
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(↑日本(東京)まで11.5時間。KLMとは僕らも利用したオランダ航空のこと。)
東西南北360度の方向に、世界各国の都市名が書かれたプレートが伸びています。スキポール空港はいわゆる世界的な「ハブ(hub)空港」であるため、乗り入れている航空路線が非常に多く、その乗り入れがいかに複雑なのかその様子がこのオブジェから伝わりますね。
次に言葉の「距離」の話。オランダの公用語はオランダ語(Dutch)で、一部ではフリジア語(Frisian)が使用されていますが、準公用語と言えるくらい英語(English)が一般的に使用されています。ですので、スキポール空港に到着して以来、入国審査、タクシーカウンターでのやり取りなど、ほぼすべての公の場での会話が流暢な英語で交わされました。(英語が通じなかったのは、僕が中心街に食事に行った際に入ったローカルなパブの40代位の店員さん、そしてその帰りに利用したタクシーのドライバーさんくらい。)ルーツを辿れば、オランダ語も英語も同じ語族なのだから、「オランダの方は英語が上手に喋れて当然だ」と思われるかもしれません。実際に、外国語習得理論では「言語の距離」という仮説が報告されており、「習いたい言語と母語の特徴が近ければ近いほどその言語の習得が早い」と言われていますが、それにしたって、オランダ語と英語は全くの別物です。今回の研修でお世話になったJos Verstegen博士も外国語として英語を習ったとのことですが、Jos博士は高校生の頃にオランダ語が通じないクラスメイトとコミュニケーションを取るために、一切オランダ語を使わないようにして、必死に英語を勉強したというエピソードをお持ちです。(Jos博士は非常に流暢な英語を話されます。)まさに「必要は成功の母」とも言える事例で、「距離があるから日本人は英語の習得に向いてないんだ」なんて言い訳が許されなく思えてしまうようなエピソードですね。
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(↑上述のエピソードをJos博士から聞き、英語でJos博士とコミュニケーションを取ろうと奮闘している派遣学生の経営2年竹本さん)

 

2. ワーゲニンゲンの「土地」と「人」
オランダは農業国です。僕らが訪れたワーゲニンゲン周辺も幹線道路沿いには延々と田園風景が広がっています。濃い霧の中、羊がくたびれた表情でバスの中の僕らを眺めていたり、超大型のトラクターが畑の上を走っていたり、と。起伏の少ない土地をぐんぐんと走る自動車の傍らには、平穏な風景が延々と続きます。
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(↑1時間の移動の間、窓から見える景色がずっとこんな様子)
オランダの農家は、副業として、風力で貯めた電気を電力会社に売っている(「売電」)兼業農家が一般的で、何機もの風車が連続して並んでいる景色には圧倒されました。
さて、先に「濃い霧」というワードが出て来ましたが、オランダの天候について。宮崎のように、太陽に非常に近い土地で育った方にはいささかショッキングかもしれませんが、僕らが訪れた時期、オランダでは基本的に晴れ間が期待できないとのことでした。3月のオランダの朝は連日2℃近くまで気温が下がり、20m先がはっきりと見えなくなるほどの濃霧がかかり、雨もぱらつく空模様が連日続きました。(冬の寒い日にクロスバイクで通勤するときのアウター、パッキングの際に最後まで持参するかどうか悩みましたが、大活躍でした。)
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(↑朝7時頃の大学敷地内の様子)
ただ、その分たまに顔を出す青空が本当に綺麗で、Jos博士も「オランダ人は青空を見ると本当に幸せな気持ちになるんだよ」と仰っていたほどです。
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(↑快晴のワーゲニンゲン大学構内)
 さて、ワーゲニンゲン(Wageningen)とは街(自治体)の名前ですが、大学から車で10分、徒歩だと30~40分程で中心街に出ます。中心街には煉瓦造りの建物が並び、こじんまりとしていながらも、温かみを感じさせる街です。カフェやパブでは多くの人が食事と会話を楽しんでいました。また、近くに大学があるため、飲食店では多くの現地の学生がアルバイトで働いているとのことです。
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(左:飲食店が並ぶメインストリート、右:街のシンボルである教会)
 ここで筆者が「驚愕した」(むしろ、「身の危険を感じた」といった方が正確かも…)土地と人についてのエピソードを一つご紹介しましょう。Jos博士の言葉の中で、次の言葉が非常に印象に残っています。
“Dutch people are born with a bicycle!”
さて、どういう意味でしょうか?これは「オランダ人は自転車と一緒に産まれるんだ!」という意味ですが、もちろん事実はそうではなくて、この言葉はオランダの方々のある生活習慣をユーモラスに表しています。オランダの道路の多くは歩行者専用道路、自動車専用道路に加えて「自転車専用道路」が存在しますが、現地の皆さんはこの自転車専用道路をビュンビュンと飛ばしながら、各々の目的地へと向かっていきます。オランダの方々は男女問わず体格が良く、必然的に自転車のサイズも大きくなりますが、そんな快速で飛ばす自転車が歩行者の数センチ真横をシュッ!と駆け抜けていくので何度も肝を冷やしました…。また、この様子は大学構内でも同じで、多くの自転車通学の学生さんは講義棟から講義棟へと全速力で駆け抜けて行きます。僕らの研修の最終講義に参加された現地の留学生の話に伺う機会がありましたが、「オランダの方は、目的地への最速手段として自転車を利用しているのだから、のんびり走るのであれば自転車なんて必要ないはずでしょ?」という認識を持っているとのこと。「なるほど、そういうことね。」と、普段趣味で自転車を乗り回す筆者はようやくその時に合点がいったのを覚えています。まさに異文化を体験し、そのもっともらしい理由に触れた瞬間でした。

 

3. ワーゲニンゲンと「食」
研修中の食事を振り返りながら、オランダ・ワーゲニンゲンの食文化について触れてみたいと思います。研修期間中のランチはワーゲニンゲン大学の御厚意で、キャンパスに併設のカフェテリア(学生食堂)でいただきました。キャンパス内には複数の講義棟がありますが、カフェテリアも複数存在し、それぞれで提供するメニューが異なります。impulseという建物(旧:昨年11月本学学生の県産品試食会の模様がUMKとMRTで放映されていたfutureという講義棟)に入っているカフェテリアは主菜、副菜、デザートを自分で好きなように組み合わせて注文するシステムでした。
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(↑ベジタリアン(菜食主義)が一般的な欧米では、写真のように大皿いっぱいのサラダがメニューにあることは当たり前のこと。他に選んだのはコロッケのような揚げ物や、野菜のスープ、バターミルク。さすが農業と畜産業で世界をリードするオランダ、いずれも美味しく頂きました。)
 別の建物でいただいたランチは、「食事の間だって学業の時間!」という現地の学生のニーズに合ったような、PC作業のついでに片手で食べられるサンドイッチとリンゴ。
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(↑チーズはどれを選んでもハズレがないくらい美味しいオランダ。丸ごとのリンゴが食事になるのはいかにも欧米の文化だなぁ、と今となっては少し昔の筆者の留学時代を思い出してみたり。)
大学の外、中心街でも食事をする機会が数回ありました。パブ(Pub)は日本の「居酒屋さん」というよりも、むしろ「お酒も提供する喫茶店」と形容した方が適切でしょうか。なので、お酒を飲みに来たお客さんだけでなく、お友達と会話を楽しむためコーヒーを飲みに来たご婦人がいらしたり、イースター(復活祭)の休日の夕食を楽しみに来た家族連れがいたりと、パブは現地の幅広い世代の生活に溶け込んでいる印象を受けました。
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(↑雰囲気の良いパブ店内。この雰囲気の中に小さい子供がいることに少し違和感を覚えました。)
さて、レストランやパブで食事をオーダーする際、オランダならではの風習について。それはサービスで付いてくる山盛りのフレンチフライ(フライドポテト)。ハンバーガーを頼んだらポテト。バケットとチーズだけ頼んでもポテト。何にでもポテトが無料で付いてきます。
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(↑フレンチフライ好きの筆者には嬉しいサービスでしたが、読者の皆様はいかがでしょうか。)

 

4. 結びにかえて
機内泊を含めて13日間という短くはない研修旅程でしたが、ワーゲニンゲン大学が提供した研修プログラムが大変充実していたため、ワーゲニンゲン市内での活動が中心となり市外に出る機会が少なく、本稿はオランダ国内全体を巡った網羅的な紀行文とは到底言えないような、題材が非常に局所的な拙稿となりましたが、ワーゲニンゲンという土地と文化の一端がお伝えできたのであれば幸いです。
 派遣メンバーに随行する語学スタッフの一人として携わった今回の研修ですが、筆者にとっては「異文化」の一端(しかし、視野を広げるには十分な程の)を体験させていただいた貴重な機会となりました。今回の研修中、Jos Verstegen博士を始めワーゲニンゲン・アカデミーの皆様には研修内外に関わらず現地で暖かなご支援をいただきました。また、本来当方が担当すべき校務を年度末の多忙の折にも関わらず快く引き受けてくださった教務委員の皆様を始め、本学教職員の皆様にもご支援をいただきました。特に、8時間もの時差がありながらオランダからの連絡に対し、遠く離れた宮崎の地から迅速にご対応頂いた法学部の徳地慎二教授と学長室の日高一哲さん、そして情報センターの甲斐祐太さんにはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
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(↑キューケンホフのチューリップガーデンにて)

 

文 / 髙橋 洋平(法学部 講師)

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