現在、各地で多くの地方創生が進んでいる一方で、「何を目的に実施しているのか?」「どんな価値を生み出したいのか?」が見えてこない住民不在の取り組みが多いように思います。そこで、本年度、高鍋町との連携協定事業では、「地域創生は、住民の幸せを高めること」という考え方をベースに、住民が作り、住民が高めていく「高鍋版幸せ指標づくり」を展開しました。
既に地域における幸せ指標づくりでは、幸せな国で知られているブータンのGNH(Gross National Happiness:国民総幸福度)を参考に、東京都荒川区などが独自の指標を作成して行政に反映させています。今回の高鍋版幸せ指標づくりでは、ブータンや荒川区などの取り組みを参考にしつつ、さらに住民が自ら指標を作り、その数値を高めていく実践を行う参加型評価という手法で実施しました。
具体的には、2019年7月から高鍋高校と高鍋農業高校の生徒たちと一緒に、ブータンのGNHや指標づくりに大切な理論を学び、ワークショップを重ねながら指標を作成しました。作成された高鍋版幸せ指標づくりは、高校生の視点、まちの視点、未来の視点が組み合わさった内容となりました。
<設問の一部>
・あなたはキャベツや餃子が好きだと思いますか?
・高鍋の文化に愛着や誇りを感じていると思いますか?
・次世代の子どもたちに自信を持って引き継ぐことができる街になっていると思いますか?
作成された40の問いは、実際に住民2000人アンケートを実施して、約30%の回答を得ました。今後、アンケートの結果を分析して、まずは高校生と高鍋町が一緒に幸福度を高める活動を考えるワークショップを実施する予定です(2020年3月上旬に実施予定でしたがコロナ対応のために延期となりました)。
今回の取り組みは、地域創生を経済的な指標だけでなく、幸福度という主観的な指標で測っていくという「代替可視性」に関する研究にもなっています。また、学生にリアルな学びの場を提供する視点から、高鍋町出身の学生を中心に今回の取り組みに関わってもらいました。その成果の1つとして、高鍋版幸せ指標づくりをテーマとした卒業論文を卒業論集に掲載することになっています。
来年度以降、高校生や住民と一緒に、幸せ指標の数値をどのように高めていけばいいのかを考えるワークショップを開催していきます。今後も、高鍋町の幸せが高まっていくように取り組みを一層推進させていきたいと考えています。
■指標づくり事前ワークショップの写真
■指標づくりワークショップ3回目の写真