去る平成25年8月16日(金),本学経営学部の出山実ゼミ(財務会計論、情報会計論)と柚原知明ゼミ(経営組織論、経営戦略論)は,合同ゼミによる「宮崎市郡医師会病院」への研究視察を行ってきました。
「宮崎市郡医師会病院」は,医師会員による共同利用施設として医師からの紹介および救急の診療を主に行っており、かかりつけ医(会員)との密接な連携の下、地域社会における基幹病院として急性疾患を中心とする重要な医療を担っております。
本研究視察の実現に際しては,「宮崎市郡医師会病院」の院長「川名隆司様」より本学合同ゼミ活動に対するご理解を賜り,受け入れ許可をいただきました。また,ご対応いただきました経営企画課課長「竹下晋司様」や総務課主幹兼庶務係長「黒木直人様」をはじめとする関係者の皆様に篤く御礼申し上げる次第です。
下記に本研究視察に関する1.研究視察日時・病院,2.写真集,3.参加したゼミ学生の感想,4.柚原知明先生の研究視察総括,について下記にご報告いたします。
記
1.研究視察日時・対象病院
○研究視察日時: 平成25年8月16日(金)14:00~15:40
○対象病院(所在地住所):「宮崎市郡医師会病院」
(宮崎県宮崎市新別府町船戸738-1)
2.写真集
3.参加したゼミ学生の感想
(経営学部2年生 中田愛珠さん)
今回初めて病院を見学しました。医師会病院の事務には総務課,経営企画課,医事課があり,それぞれの部門が連携することで病院を経営していることがわかりました。カルテの管理に関しては,電子カルテにより事務員から看護師,医者まで様々な部門の人が情報を共有できる。また,特定の病気の患者に対しては,入退院までのプラン(クリニカルパス)が決まっており,それに基づいて処置をするなど,医療とIT技術がうまく連携していると感じました。医療機関では,患者に対する処置においても,事務的な仕事においても「情報を共有する」ということが大切だと感じました。
(経営学部2年生 吉永優介くん)
病院研究視察にいくのが始めてだったので,どのような研究視察内容なのか楽しみにしていました。ご説明された方の話し方が,とてもうまく非常に興味深い内容でした。病院での利益があまりないということにとてもびっくりしました。心臓病専用救急車「モービルCCU」の導入を行っているので,処置対応が素早くできることは,素晴らしいことだと思いました。
お忙しい中,貴重な話をしていただきありがとうございました。
(経営学部2年生 岩下佳澄さん)
私は今まで,宮崎市郡医師会病院と普通の病院の違いが分かりませんでした。しかし,今回の見学で医師会病院は宮崎県の医師会が中心となって作られた病院であり,その役割も異なることが理解できました。私は,CCU(心臓病専用救急車)に乗せてもらい,病院の周りを一周しました。車内には様々な器具や酸素ボンベなどが管理されており,最先端の医療に触れた気がしました。
今後も,企業や病院などの様々な場所へ見学にいきたいと思いました。
(経営学部3年生 山﨑納津美さん)
病院への研究視察は初めてなので,どのような話が聞けるかとても楽しみでした。まず,宮崎市郡医師会病院の概要,病院内での事務職の仕事について説明して頂きました。病院の収益,費用,利益などのファイナンスや受付の職務だけでなく,人事・労務管理,カルテ管理や中長期の経営分析など様々な事務職があることが分かりました。そして,宮崎県で初めて導入された心臓病専用救急車「モービルCCU」の乗車・走行体験しました。写真だけではわからない乗り心地なども体感でき,大変貴重な体験をさせて頂きました。普通の救急車の1.5倍ある車内はストレッチャーや機器,薬などが装備され,思っていたより狭く,揺れがよく伝わってきました。
今回の視察は内容盛り沢山で,大変興味深い話を聞くことができました。病院経営について,さらに調べていきたいと思いました。
お忙しい中,本当にありがとうございました。
4.柚原知明先生の研究視察総括
今回の研究視察は,急性疾患の基幹病院として重要な役割を担う「宮崎市郡医師会病院」を対象に本学合同ゼミとして初の医療機関への訪問となりました。「宮崎市郡医師会病院」は,2012年10月1日宮崎県で初めてモービルCCU(医師・看護師が同乗する心臓血管疾患集中治療機能を備えた救急車)を導入しております。宮崎県における5疾病5事業・在宅医療の更なる充実に貢献し,広域救急医療体制の構築を目指し,高度で良質な医療を提供できる医療機関として一層の飛躍を続けております。私たちは,当初急性疾患の基幹病院としての人命を預かる社会的使命を鑑みた場合,セキュリティーやプライバシー保護の視点からも合同ゼミ等の組織的団体の受け入れが困難な状況を予想しておりました。院長「川名隆司様」より本学合同ゼミの研究視察に対するご理解とご協力を賜り,実現に至った次第です。
今日における医療を巡るわが国の状況は,国民医療費の増加,高齢化の進展,医師の地域的な偏在と診療科の偏在,医療技術の高度化・複雑化,医療機器の技術革新に伴う高額化,医師と患者間における情報の非対称性,医療機能の分化,医療機能の分化の進展に伴う医療機関同士の統合化・連携化等の様々な課題に晒されております。医療機能の分化形態については,医療の高度化・専門化を背景としながら,多様化する「医療機能の分化」と「患者特性の分化」が存在します。特に医療に関わる現場においては,医療の効果的な効率性を考慮した「医療機能の分化」という集積化が進展しております。具体的な「医療機能の分化」には,①外来通院治療,往診治療と入院治療,②内科的治療と外科的治療,③急性疾患と慢性疾患,④CCU(冠疾患集中治療室),ICU(集中治療室),RICU(呼吸器疾患集中治療室)やNICU(新生児集中治療室)等の特殊医療に関わる集積化です。「宮崎市郡医師会病院」は,これらの「医療機能の分化」に伴う外来通院治療を対象とするのではなく,急性疾患に対する地域における重要な役割を担っております。また,「医療機能の分化」の進展に伴う医療機関の統合化・連携化に向けては,医師会による共同利用医療施設・開放型病院としてITによるネットワークシステムを駆使した推進を実現しております。
病院経営は,治療に関して人命を預かるという倫理的・人道的な立場から一般的な効率性の追求が困難な実情が存在します。また,今日における「医療機能の分化」が進展している状況下,一般の民間企業が目指す自組織内(連結決算対象のグループ含む)という閉じた領域内での経済合理性の追求も困難な実態にあります。私たちの地域社会における限られた医療資源(医師・薬剤師・看護婦,病棟・設備,高度な高額医療機器等)の効果的な最大活用と貢献を目指して,如何にして医療機関や病院同士の統合化・連携化を実現していくかが大きな社会的課題といえます。
本研究視察終了時には,最上級生として枇杷彩乃さん(出山ゼミ4年生)がゼミ生全員を代表して立派に御礼の挨拶を行ってくれました。これらの経験は,今後における本学での学習,及び将来の職業人生において必ず貴重な経験になるものと思います。ゼミ学生諸君は,研究視察(本学の授業含む)において常に高い問題意識を持ちながら質問や意見を整理して積極的に発言する姿勢が重要です。質の高い質問や意見は,訪問先のご対応いただいている関係者の皆様に対する礼儀でもあります。ぜひ,今後においても継続的に研鑽を積み上げていってもらいたいと思います。
最後になりましたが,私たちの受け入れ準備と懇切丁寧なご対応をいただきました院長「川名隆司様」をはじめとする「宮崎市郡医師会病院」の皆様に篤く御礼申し上げる次第です。今後における「宮崎市郡医師会病院」の地域医療へのご貢献とご発展を心より祈念申し上げます。
以上
(編集 経営学部/出山実)