7月7日(月)、文部科学省委託事業の一環として、都城商業高校商業科の3年生41名を対象にフューチャーセッション形式の対話型授業を実施しました。その目的は、我々が想定する「地域の問題解決を目的とした生徒主体型授業」モデルが、高校サイドのニーズや高校生のレベルと一致しているかを確かめることにあります。今回の対話型授業では、「高齢化社会の未来-都商の役割、都商生の役割-」をテーマに設定し、フューチャーセッションの対話プロセス(ワールドカフェやクイックプロトタイピング)を通して、望ましい未来像や都城商業高校の生徒たちが取り組めることを話し合いました。本学からは文科省委託事業のプロジェクトメンバーである田中素子准教授、山田恭子講師、出山実講師、都城商業高校からはクラス担当である中元和博先生、久保良太郎先生が参加しました。
1.対話型授業の流れ
今回の対話型授業は、高校の5限と6限にあたる100分間で実施しました。対話型授業の流れは次のとおりです。
①.イントロダクション(20分)
イントロダクションでは、フューチャーセッションの概要、今回のテーマである高齢化社会の問題について参加者全員で共有しました。
②.ワールドカフェ(7分×3回:25分)
ワールドカフェでは、3つのテーマについて対話をしました。
テーマ1 |
身近な生活(地域コミュニティ)において高齢化社会がもたらす困ったことは? |
テーマ2 |
それは誰が対応すること?「行政、企業、専門家、地域の人」などにグルーピングしてください。 |
テーマ3 |
都商のみんなが、高校として、高校生として高齢化社会の問題に対してできることは? |
③.クイックプロトタイピング(30分)
クイックプロトタイピングでは、ワールドカフェで選ばれたアイディアを使って、「未来新聞づくり」を行いました。未来新聞の課題は、「都城市の高齢化問題について地元の商業高校生が中心となって新しい取り組みを始めたことが高い評価を受けて新聞に掲載されました。それは、どのような見出しで、どのような内容が書かれていたでしょうか?」と設定しました。
④.プレゼンテーション(20分)
各グループに作成した未来新聞を報告してもらい、アイディアを参加者全員で共有しました。
⑤.サークル
振り返りの時間として、教員からのコメント、またグループごとに本日の気づいた点、感動した点、明日から実行した点などを共有してもらいました。
2.対話型授業の成果について
今回の対話型授業では、次の8つの未来新聞が作成されました。
「都商生がお散歩!」 お年寄りと都商生をする取り組み。買い物難民や多発する事故を受けて、都商生が一緒にお散歩を実施する。 |
「お年寄り向けハンバーガーの開発」 |
「届け、希望の車いす」 |
「都商見守りレンジャー参上」 |
「LET IT GO クリーン活動」 |
「都城に新たな伝統」 |
「方言がねごならんように」 |
「お年寄り目安箱」 |
作成された未来新聞は、高齢化社会の問題を「食」、「環境」、「文化」、「地域福祉」に関連付けて考えて、複雑な高齢化社会をより良くしていく内容のものとなりました。もし8つの未来新聞の内容が実現したら、都城エリアは魅力のある都市になるのではないかと期待が持てる内容でした。未来新聞づくりから、生徒たちが積極的に未来に関わっていく思いや姿勢が読み解けました。高齢化社会の問題は、誰しもが当事者意識を持って参画していくことが必要なのかもしれないと推測することができます。今回の未来新聞の内容は、さらに分析をしていき、次回の対話型授業やシンポジウムにて役立てていく予定です。
今回のフューチャーセッション形式の対話型授業では、参加した生徒に「未来志向」や「創意形成」の対話プロセスを経験してもらいました。具体的な社会問題を自らが当事者として対話することで、社会の一員としての意識が生まれたと考えられます。フューチャーセッションの基本的な考え方や対話のプロセスは、これからの社会問題や地域問題に取り組む際に大きな力になると考えられます。次回は、高齢者社会を担う「個人」に焦点を当てて、フューチャーセッション形式の対話授業を実施していきます。
「免許更新制高度化のための調査研究事業」プロジェクトチーム