【コロナ禍の中での法学教育の意義とオンライン対応の可能性の模索】
産経大法学部では、コロナ禍の中で、法学教育の意義を考え、宮崎県弁護士会との連携企画として模擬裁判を企画しました。当初は、対面での模擬裁判を予定していたのですが、最終的には、オンラインでの模擬裁判を実施しました。オンラインでの模擬裁判の実施は、様々な困難がありました。
1.対面形式での模擬裁判の一部実施(12月13日産経大図書館ラーニングコモンズスペース実施)
資料等で宮崎県弁護士会のご協力を戴き、当初は、12月13日と1月13日という2回の期日で対面実施を予定しており、12月13日に、対面での1回目の期日を実施しました。裁判官役(3グループ程度)、検察官役(3名)、弁護人役(3名)、被告人役、証人役といった配役に分かれ、冒頭手続を実施しました。
※写真は刑事法廷の一場面です。
2.コロナ禍第3波の襲来!オンライン模擬裁判の実施に急遽変更!
予定では、令和3年1月13日に対面での第2回期日の実施を予定していましたが、コロナ禍第3波襲来により、対面での実施が不可能となりました。そのため、急遽、オンラインでの実施を検討することとなりました。
しかし、大学レベルで実施される、オンライン模擬裁判(刑事)は、未だ聞いたことがなく、学修効果を確認するためにも、別の模擬裁判資料を用いて「オンライン模擬裁判の予行演習」を急遽実施することにしました(令和3年1月13日)。そこで、様々な課題が浮き彫りになりました(配役ごとの打ち合わせ方法やブレイクアウトルームのグループ分け設定の段取り、裁判資料をどのように正確に各自が参照できるようにするのか等)。
3.本番のオンライン模擬裁判の実施(令和3年2月3日)
いよいよ、本番のオンライン模擬裁判の実施です。総勢25名ほどが参加しました。予行演習での反省を踏まえ、「配布資料は学内ネットワーク上にアップし、学生が自ら取りに行けるようにする」「開始後にグループ分けの時間をつくり、グループに分かれて各役割ごとの発言の順番を自分たちで決める」等、できるだけオンライン上で学生が自主的に準備できるようにしました(これにより、オンライン上でも、学生が自ら役割を確認し、積極的に模擬裁判に参加できたと思います)。
※オンライン模擬裁判の様子(パソコン画面には、裁判官役、検察官役、弁護人役、被告人役、証人役が表示されています)
また、模擬裁判の最中も、弁護士の先生によるアドバイスを適宜お願いしました。本来の裁判ではありえないことですが、学生達が法的思考を学ぶという視点からすると、手続の意味がわからないまま進むよりも、専門家のコメントが入り、実際の裁判手続の雰囲気をオンライン上からも感じてほしいと考えたからです。これにより学生達は、手続の中で自分たちが今やっていることはどういう意味があるのかを考え、集中力を切らさずに裁判全体を実施できたと思われます。
そして、証人尋問の手続きが終了したあと、「ブレイクアウトルーム」の時間で3つの裁判体に分かれ、適宜弁護士の先生に各ルームに参加していただき、評議を実施しました。結論としては、3つの裁判体とも、「無罪」となりました。
◎学生の感想
学生達から終了後に感想をうかがったところ、「オンラインでの模擬裁判に不安があったものの、オンライン上でも話合うことができたし、意外に雰囲気を体感することができた」「コロナが落ち着いたら裁判傍聴に行きたいと思うようになった」という好意的なものが多かったです。また、裁判官役を担当した学生からは、以下のようなコメントをいただきました。
「今回の模擬裁判はオンライン上での試みで、直接対面で模擬裁判をするよりは多少は、臨場感などを味わうことは出来ませんでしたが、裁判の流れから判決を考えるまで考えさせられることが多くあり、勉強になりました。特に、裁判官という役は、この事件の最も人生を変える判断をすると言っても過言ではなく、メンバーと考えながら自分たちの出した答えは、これからの勉強にも役立っていくと感じました。オンライン上で模擬裁判をすることは、なかなかないと思いますし、画面上でもグループに分かれて発言できる面は良いと思いました。」
◎教員の感想
今回、いきなり対面からオンラインに変更となり、正直、かなり戸惑いがありました。しかし、「オンライン模擬裁判をやってみよう」とすること自体に重要な意味があったと感じております。すなわち、「どのようにしたらオンライン上からでも学生達が主体的に裁判手続に参加し、個々の役割に積極的に参加し実現できるのか」を、実践的に考え、体感することができたと思うのです。昨今、DXなど情報化の更なる進展に伴い、我々は新たな対応を迫られています。我々自身も、実際に体験し、チャレンジを続けることを通して、時代の変革に柔軟に対応することや多様性を理解する重要性を学生に伝えられるものと考えております。産経大法学部は、今後もこのようなチャレンジを継続していきたいと考えております。
(参考)宮崎県弁護士会HPは右をクリック!宮崎県弁護士会 (sakura.ne.jp)
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